
ZOO
著者/乙一
集英社
\ 1500
毎日届く恋人の腐乱死体の写真。彼女を殺したのは誰か? 「犯人探し」に奔走する男を描く表題作など、書き下ろし新作を含む10編を収録した短編集。『小説すばる』などに掲載された作品をまとめる。
「なんなんだこれは」 本の帯に書かれていたキャッチコピーですが、まさにその通り!『なんなんだこれは!!』です。普通の作家なら短編集でもテーマが決まっていて大体は同じテンポで進んでいくんですが、乙一さんに限っては『セオリー通りにいかない作者なんだ』と改めて確認しました。ブラックユーモアな話だと思えば次に来る話はミステリー仕立てになっていたり、果てはホラー仕立てになっていたりと行着く暇を与えさせてくれない短編集です。それにしても乙一という人は不思議な文章を書く人だな〜と作品を読むたびにそう思います。一度に大勢の首が飛ぶ模写があったり、理不尽な殺人が残虐な模写で書かれていたりと、暴力的なはずなのに、なぜか落ち着いた雰囲気が漂っているんです。乙一さんって本当に不思議です。
色々な短編があるのですが、個人的には最後の『落ちる飛行機の中で』の、ハイジャックされて間もなく墜落するという極限状態の中で交わされる主人公二人の会話があまりにもその状況と掛け離れていて、そのアンバランスさが面白くて好きです。ただ、『 SEVEN ROOMS 』 という話はあまりにも悲しすぎます。話の流れで殺される人の人物模写が細かくなっていき、やっとその人物がつかめたと思ったら、いきなり殺されてしまうという展開も後味が悪い(このような読者の心理も計算して書いてるんでしょうかね?もしそうであれば、乙一は色々な意味で天才かも・・・)。それに、女性が殺される模写が自分は苦手です。だから、この作品だけは嫌いです。
死にぞこないの青
著者/乙一
幻冬社文庫
\ 457
飼育係になりたいがために嘘をついてしまったマサオ。大好きだった羽田先生から嫌われ、次第にクラスで先生からもクラスメイトからも苛められるようになる。そんな時、彼の前に“アオ”が現れた・・。久々に読んだ乙一作品でした。毎回、乙一作品には印象的な少年少女が登場しますが(例え殺人を行ったとしても)どの登場人物も淡々としているイメージがあります。この物語の主人公“マサオ”は先生からいわれのない虐待を受けながらも淡々と受け流していきます。まるでそれがすべて自分に責任があるかのように感じながら・・・。一見、単なるホラー・サスペンスにとらわれがちだが、実は苛められる人が抵抗することを徐々にそがれていく心理、自分に自信の持てない人が自分を他人の目からそらす為に自分よりも弱いものを傷つけていく空しい様が静かに描かれています。単なるホラーという範疇に留めておくにはもったいない、人の弱さ、悲しさを描いています。そんなところが乙一作品の魅力なのだと思います。
作者別/50音別/HOME